これまで、作者の方や内容について自分なりにご紹介していましたが、今回からはもっと別な方法を模索します。
そう思ったきっかけは、DJ PATSATこと土井政司(敬称略)による商品紹介を読んでいてのことでした。
土井さんは大阪・淡路で「書斎解放戦線」をかかげて、タラウマラという店を営まれています。
Instagramひとつとっても、投稿されている本やCDの紹介についての文章は、出版社の紹介をコピーペーストしたものでもなければ、紋切り型の言葉を一つ二つ放って片付けるものでもない。そこにあるのは、「体内を一度通過した言葉、血肉化された言葉」です。
自分はまだ、こうして、ひとの言葉に対して解釈を表明し、言い切ることが、率直にいえば怖いです。
そこで、「感じます」「思います」「かもしれません」を使えば、簡単に丸くできることもわかっています。
でも、「不遜さもないが、当たり障りもない(毒にも薬にもならない)」作品紹介をしていて自分はいいんだろうか?作品を世に放つ人が覚悟をもって紡いだ言葉に対して、自分は安全圏からぺなっとした言葉を投げているだけで、満足なんだろうか?そもそも、素晴らしいと思ったから販売することにした作品に対して、そのへっぴり腰はなんだ??と思いました。
「平凡な生活」は、DJ PATSAT自身の言葉によってきっちり編まれた日記です。ユーモラスな一日もあれば、ほろっとくるようなやりとりもあります。でも、常にどこかには抜き差しならない緊張感が漂っています。ふとした瞬間に、読者に対して、「それでお前はどうする?」と問いかけてくるような。
---
毒であろうが薬であろうが受け取る気概のある貴方に、自信をもっておすすめできる作品です。
解説は、自分が書きました。
Te La Mondoの店頭とオンラインショップにて販売しております。
▽▼公式情報▼▽
敬愛する作家、庄野潤三『夕べの雲』講談社文芸文庫版の解説で阪田寛夫が「丘の上の庄野家を写した大浦家五人家族の時の流れと同時進行で、毎日三枚だけで書き進められた、ある意味では極限の、この先どうなって行くか全く分からない「いま」の接点を、時計の秒針と同じ速さで踏み出し歩み続ける小説だ」と書いています。
本書はまさに自分にとってそのような書き物です。
タラウマラ開業5年目のベスト・オブ・ベストな日記本にして、著者の45年間の人生哲学がすべて詰まっていると言っても過言ではない「平凡な生活」の記録。偉そうな物言いに聞こえるかもしれませんが、本書があればレイモンド・マンゴーの『就職しないで生きるには』を一旦、棚に戻しても問題ないかと(笑)。同時代に同国で生きていくことを考えれば、本書のほうがはるかに実用的だと自負しています。
著者 DJ PATSAT
解説 小幡玲央
発行所 タラウマラ
装丁・本文デザイン 呉松慶吾
カバー印刷 マノ製作所
印刷・製本 イニュニック
375頁 文庫サイズ